連載・夢のかなたの街/川﨑大助/エピソード5:ホノルル 九〇年代とそれ以降/「彼が書いた島、僕のレンタカー」
【SERIAL STORY】Cities Beyond Fictions by Daisuke Kawasaki ep5 Honolulu -in and after90's-
あの島は、本当にあった
会った途端の、ひと目惚れだった。テディ・ベアーズの、だから十代だったフィル・スペクターが書いた一九五八年のクラシック「To Know Him Is to Love Him」よろしく、いかれてしまったのだ。九〇年代前半当時はホノルル国際空港という名だった、あのエアポートに初めて降り立ったとき、一瞬で僕は、ハワイと恋に落ちた。
空気が、違った。ユナイテッド・エアラインズの機内の、乾燥しきって刺々しいそれとは180度逆の、適度な湿り気を帯びた、あたたかな大気が僕を包み込む。甘い香りがする。ブーゲンビリアの花の香にもどこか似た、穏やかなるこの甘さは、島にいるあいだじゅう、つねに僕の身の周辺を漂い遊び続けていてくれたような気がする。
そして、…
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